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ゆつくりとバンコクの朝は目覚めゆく河面を滑る小舟と共に 朝靄のまだ消えやらぬバス停に彼は立ち居りトトロのやうに 随所にユーモアとペーソスを鏤めた第１歌集。【「TRC MARC」の商品解説】 知らぬうちに俺は五十になつており二十のままに知つたかぶりで おそらくは教へ子ならむその人の歌追ひ読めり「塔」を開いて 日溜まりに少女の小さな影ひとつ能古の空気と戯れてゐる 人住まぬ村となりたる古里を老父母は捨つ老後のために 見たことのない奴もまたしつかりと席に着いてる学期末試験 この歌が母の最後の作品か「北限」七十一号を開いては閉づ 香典の返しの作法がそれぞれに違ひたり子は散り散りに住む だらだらと鞄は重くなりにけり行きつ戻りつ仕事が溜まる 爪を切り忘れたことに気がつきぬパキスタンへの飛行機の中 年の瀬のＡＴＭに並びをりラーメン屋よりじつと待ちけり